God dag!Lone Wolf会計士です。
今回は企業価値評価について取り上げ、難解な世界をわかりやすく解説していきたいと思います。
それではいってみましょう。
このブログはこんなブログ
このブログは「グローバル×会計専門性」を目指す人を対象に、「米国公認会計士の魅力やキャリア情報、及び「グローバル×会計専門性」というキャリアを歩むうえで役に立つノウハウが得られる」というコンセプトで運営しています。
前提知識はゼロかつ初心者向けの記事のため、「グローバル×会計専門性」のキャリアを目指すつもりがない方でも、会計のエッセンスの理解に役立つ記事の執筆を心掛けています。
ご参考にして頂ければ幸いです。
企業価値評価とは?
企業価値評価とは、M&Aや事業再編のため対象となる会社全体や一部の事業の価値を算定することです。
算定した企業価値が、例えば買収等の実際の取引の価格交渉において参考となります。
ただし、「価値」と「価格」の違いについては意識しておく必要があります。
「価値」については、誰にとっての価値かという観点で、一義的には決まりません。
※「価格」は売手と買手間で実際にお金が動きますので、一義的に決まります。
確かに、サッカーW杯のチケットに「価値」を感じて何万円も出す人もいれば、現地観戦に「価値」を感じないためにテレビで見る人もいるよね
よって、企業価値評価では多面的に価値を検証していくことが重要、となります。
つまり、企業評価のアプローチは主に3つありますが、できる限り複数の方法を採用し、水準感をクロスチェックすることが好ましい、ということになります。
なお、企業という実態があるのかないのかよくわからないモノの価値を算定することに加えて、価値は一義的に決まらないわけですから、実際の企業価値評価においては価値はレンジ(××円~×××円)で示されることが多いと思います。
企業価値評価の目的
少々理論的になりますが、企業価値評価の目的は簡潔にまとめると以下の通りになります。
- ①取引目的…買収や事業再編の際の取引価格の参考とするため
- ②財務報告目的…実際に取引が生じた場合、会計ルールに則り財務報告をするため(いわゆる企業結合会計や減損会計)
- ③裁判目的…訴訟になった場合、株式の取引価格が妥当であったかどうかを事後的に検証するため
なぜ企業価値評価が必要?
なぜ企業価値評価が必要となるか、①の取引目的を例にとって解説していきたいと思います。
M&A(Merger &Acquisition)という言葉はどこかでお聞きになっているかもしれません。
M&Aは企業の買収や合併の際に登場する用語だね
企業自体を売買することは特別なこととは言えないくらい、現在のビジネスではM&Aがさかんであると言えると思います。
企業としてもこの変化の多いグローバル社会で、一から自分達で時間をかけて新規事業を始めるより、ある程度その事業で成功している会社を買ってきた方が時間的に早いですよね。
○○企業が××企業によって買収された、このようなニュースは時折耳にします。時間をお金で買うようなものです。
オーナー企業の後継者問題もあります。創業者や現社長の後継者がいない企業を、第三者に売却することも増えてきたと聞きます。
企業自体の売買はしなくとも、企業の株式の売買は日常的に発生しています。
- とある企業がとある企業に対し敵対的買収(TOB)を仕掛ける。
- とある企業がとある企業の持分を20%取得する(20%出資する)
- とある企業が子会社の持ち分を20%追加取得し、完全子会社化する(100%支配する)
- とある企業が自社株買いを実施する
このように取引を実行する前に、必ず何らかの形で企業価値評価(=株式の価値評価)が行われています。
なぜか?
それは、「いくらで取引を実行すればよいか」を検討するためです。
また、買収等の取引を実行する前に(恐らく役員クラスまで)社内承認が必要になると思います。その承認を取るためにも、「いくらで取引を実行することが妥当なのか」という価格感の目線は重要です。
対象となる企業(または企業の株式)の査定のようなものです。
個人株主の立場でも、ある企業の株を購入する前には、理論株価の検討や現在市場で取引されている株価の水準の検討は何らかの形で実施しているはずですよね。
加えて、継続的に自社の企業価値評価を実施し、自社の価値というものを常に把握しておくことにも意味はあるかと思います。
このように、多くの企業及び個人で企業価値評価が実務上必要になるのです。
企業価値評価の手法
企業価値評価の手法としては、以下の3つに大別されます。
- ①インカムアプローチ
- ②マーケットアプローチ
- ③ネットアセットアプローチ
①インカムアプローチ
インカムアプローチは、対象となる企業が将来に獲得できるであろうと期待されるキャッシュフローを基礎として、企業価値評価をするアプローチとなります。
将来獲得が期待されるキャッシュフローは、対象となる企業の事業計画に基づいていることが多いと思います。
企業の内部情報に基づいていますから、市場で入手可能である情報よりも多いことが多く、企業固有の収益力を反映させることができるアプローチであるといえます。
詳細は以下の記事にて紹介していますので、ご参考にしてください。
②マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、実際に発生した市場の取引に基づいて企業価値評価をするアプローチです。
上場企業の場合、そもそも株式市場に株が流通しており日々取引が行われておりますので、株式の価値の参考情報は容易に手に入ります。
※投機的な要因で株価が乱高下することもありますので、株価も唯一絶対の解ではないです。
非上場企業の場合、そういった市場での株式の価格情報はありませんので、事業が類似する企業の時価総額に基づいたマルチプル(倍率)や同じような買収が過去に生じている場合はその取引価格を参考にしたりします。
なお、時価総額とマーケットアプローチについての詳細は以下の記事に記載しましたので、参考にしてください。
③ネットアセットアプローチ
ネットアセットアプローチは、企業の会計上の貸借対照表に注目したアプローチです。代表的な手法に「簿価純資産法」があります。
企業の貸借対照表に計上されている、資産や負債については、取得原価で評価されているものが多いです。
この取得原価で評価されている資産や負債について、すべて時価評価し、資産と負債の差額が純資産の時価、というアプローチを取ります。
もちろん、このアプローチが適用できるのは、資産と負債について信頼できる時価が入手可能な場合のみであって、限定的です。
例えば、対象となる企業が保有している資産が主に土地等の信頼できる時価が入手可能かケースに限られるかと思われます。
なお、すべての資産と負債を時価評価せずに、一部の資産と負債について時価評価の対象とする手法を「修正簿価純資産法」といいます。時価評価の対象となっている資産と負債以外は会計上の簿価を使用します。
今回は以上です。企業価値評価の全体像について解説しましたが、詳細はまた別途記事を書こうと思います。それでは、Vi ses!
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