会計の全体像シリーズ初心者必見!会計の全体像

これだけ!会計士が会計の全体像を解説!【⑧ファイナンス基礎編】

会計の全体像シリーズ
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God dag!Lone Wolf会計士です。

今回は「会計のその先へ…」です!

今まで取り扱ってきた財務会計や管理会計については、「自社」の「過去の事象」だったり、「過去の事象に基づいた未来の意思決定」という分野でした。

このように会計は基本的に「過去」+「自社」の事象をメインに扱います。

しかしながら、ビジネスは「自社」で完結することはなく、常に「他社」および「未来」が存在することとなります。

考えてみれば当然で、ビジネスはこれから利益をどう上げていくかは「未来」の話で、「過去」どんなに利益を上げていても、それだけでは未来永劫の繁栄の保証にはなりませんよね。

ここで、会計のメインである「過去」とビジネスの「未来」を会計の側面からつなぐものがファイナンスという学問になります。

今回はファイナンスを役立てる前の基礎知識となります。それではいってみましょう。

このブログはこんなブログ
このブログは「グローバル×会計専門性」を目指す人を対象に、「米国公認会計士の魅力やキャリア情報、及び「グローバル×会計専門性」というキャリアを歩むうえで役に立つノウハウが得られる」というコンセプトで運営しています。
前提知識はゼロかつ初心者向けの記事のため、「グローバル×会計専門性」のキャリアを目指すつもりがない方でも、会計のエッセンスの理解に役立つ記事の執筆を心掛けています。
ご参考にして頂ければ幸いです。

ファイナンスとは?

ファイナンスは、統計学の知識をベースにキャッシュフローに焦点をおいた学問で、企業の未来の投資の意思決定に貢献しています

なぜキャッシュフローに焦点をおくのかな?

直感的にもわかると思いますが、ビジネスはキャッシュに一番重点を置いているからです。

例えば、掛けで売上をいくら上げても、その掛け金を回収できなければ売上はゼロに等しいですよね。

新たに設備投資をしようと思っても、手元にキャッシュがなければどうしようもありませんよね。

一方、会計は発生主義に基づき、期間を一定に区切った「利益」を重視しますので、対照的ですね。

ファイナンスは難解な統計学に基づいている学問ですので、難しいのは間違いないですが、先人たちが導いてくださった結論を上手に利用しながら、実務で応用していくのはそれほど難しいことではないかと思います。

EBIT、EBITDAとは?

EBIT(イービット)やEBITDA(イービッダー)という用語はどこかで聞いたことがあるかもしれません。これらはファイナンスでは普通に登場します。

EBIT = Earnings Before Interest and Taxes (税金支払いとと金利支払い前の利益)

EBITDA = Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization (税金、金利支払い前、減価償却費及び無形資産償却費を控除する前の利益)

会計の利益を簡易的にキャッシュフローに直したものがEBITDAです。ファイナンスはキャッシュに注目していることから、報告された業績(=会計上の利益)から簡易的にキャッシュフローを計算することが目的になります。

一方、継続的に発生する本業からの利益を示したものがEBITとなります。継続的に発生する本業からの利益を基準として将来のキャッシュフローが見積もられますので、EBITといった概念が登場するのです。

詳細は以下の記事で解説しましたので、ご興味ある方はご一読ください。

現在価値とは?複利とは?

ファイナンスの特徴ともいえる現在価値の概念とは、将来のキャッシュフロー(例えば、1年後の100万円)と現時点のキャッシュ(例えば、今手元にある100万円)は価値が同一ではない、ということです。

どういうことでしょうか?

例えば、日本国債を100万円買ったとします。仮に1年後に利息が1万円(=年率1%)つくとしたら、今現在手元にある100万円は1年後には合計101万円になります(簡略化のため日本国債がデフォルトすること(100万円が将来返済されないこと)はないとします)。

よって、今手元にある100万円と1年後の101万円が価値が等しくなる、というようにファイナンスでは考えます。

逆にいうと、1年後の101万円を現在の価値に換算すると、100万円になります。これを現在価値に割引く、という言い方をします。

では今手元にある100万円は、2年後は102万円になるってことかな?

答えはNoです。

ここで複利の考え方が登場します。複利とは獲得した利息に利息が付く(利息に手を付けない場合)、ということです。

どういうことか?

先ほどの例でいうと、手元にある100万円は1年後に101万円になります。

獲得した利息1万円は手を付けずそのままにしておくとすると、1年後の101万円は以下の計算で102万100円となります。

101万円 × (1+1%) = 102.01百万円

利息1万円に対する1%の金利100円分、102百万円より大きくなっていますね。

複利を味方につける長期投資がトレンドだったりするよね

この現在価値に割引くことと、複利の考え方はファイナンス上重要な概念ですので、是非覚えておいてくださいね。

リスクとは?

ファイナンスでリスクと言えば、将来の不確実性を指します。

例えば、1年後100%の確率で100万円損することがわかっている投資は、なんと、ファイナンス上はリスク0と考えます。

「確実に損をすること」がわかっているので、不確実性はない、ということだね。

また、以下の例を考えてみましょう。どちらがリスクが低いでしょうか。(ちなみにA社B社共に1年後の利益の期待値としては220で同じです)

A社の方が安定している(=不確実性が低い)ね。

B社については上手くいけば500の利益が得られますが、60の損失になることもあり得ますね。一種のギャンブルのような状態です。

B社に投資するならば、(リスクが高いため)A社に投資するよりもより高いリターンを求めるべき、とファイナンスは考えます。

ハイリスク、ハイリターンというものだね。リスクに見合ったリターン、ということだね。

なお、ファイナンスは統計学の知識を使って、このリスクを数値化しています

このリスクの概念は理解しておいてくださいね。

CAPM(キャップエム)とは?

さて、リスクの概念をご理解いただいたところで、リスクに見合った要求リターンをファイナンスではどのように考えるかについてです。以下の公式をご覧ください。

CAPMの有名な公式 株主資本コスト = Rf + β×(Rm-Rf) (+アルファを考える場合もあり)

ファイナンスの結論のひとつ、CAPM理論の有名な上記公式を覚えておくと有用です。

株主資本コストとは、株式投資として出資金を集めようとした場合の、株式投資家達の要求リターンを表します

なお、会計の世界ではこの株主資本コストは貨幣で測定できないので、その存在は登場しません(会計上の利益の計算上、このコストは考慮されない)。

これが会計の限界の一つであり、ファイナンスという世界が形成されている理由のうちのひとつです。

借入金としてお金を集めようとした場合の銀行の要求リターンは契約利率ですぐわかる一方、株式投資家達の要求リターンはどこにも明記されていないのにわかるなんて、すごいね

以下にひとつひとつの変数を解説します。

Rfはリスクフリーレート 

リスクがなくて確実に得られるリターンを表します。将来確実に得られるリターンですね。例えば、国債に投資することで得られる利息は、(国は倒産しないと考えられるので)将来確実に得られると考えられます。この国債の利率がリスクフリーレートです(例えば、年率1%)。

Rmはマーケットリスクプレミアム 

株式に投資することはリスク(=不確実性)が伴います。従って、リスクを負うのであれば、通常はそれに見合ったリターンを求めます。この株式投資をすることに対する要求リターンの水準(=期待収益率)をマーケットリスクプレミアムといいます(例えば、年率5%)。

βはベータ

ベータとは、細かい議論は端折りますが、個別株式が市場全体のベンチマークと比較してどれほどリスクがあるか、を表します。

例えば、A社株は、市場全体(例えば、日経平均)が1%値上がりしているところ、2%値上がりしました。すると、A社株のβは2.0となります(A社株は市場全体より2倍リスクがある)。

A社株は市場全体よりも値動きが激しいのでリスクが高い、と考えられる、ということです。

以上から、A社の株主資本コストは公式から以下の通り計算されます。

A社の株主資本コスト = 1%+2.0×(5%-1%)= 9%

よって、A社株式に投資する(リスクを負う)ならば、年率9%ぐらいのリターンをくださいね、ということが期待されているという結論になります。

WACCとは?

WACCとは、Weighted Average Cost of Capitalの頭文字を取ったものです。そして、公式は以下の通りです。

WACC  =  負債コスト × 負債比率 + 株主資本コスト × 株主資本比率

会社が事業を運営するためには、資金が必要です。

資金の調達はどのようにするのか?

そういえば、資金調達については前に「財務三表」のトピックで扱ったね

答えは返済の義務がある借入金と返済の義務がない株式出資金、でしたね。

先ほど株主からの出資金のコストについては解説しました。

銀行との契約上銀行が要求する利率は明記されているため、借入金のコストはシンプルで、以下の通りです。

借入金コスト負債コスト = 借入金の利率 × (1-税率)

借入金の利息は、税金上損金算入が可能なので、税金を減らす効果を考慮しているんだね
損金算入については、以前のトピックで扱ったね

これにて、借入金コストと株主資本コストがわかりました。

以上を用いれば、企業の資金調達のコストが計算できると思いませんか?

資金調達コストの計算の際には、加重平均という概念を使います(簡単です)。

例として、A社の例として以下をご覧ください。

ここで今まで扱ってきたA社の例でWACCを計算してみます。

以上から、A社の負債コストを3%、株主資本コストを9%、比率を3:7とすると、WACCは7.2%となります。

この7.2%がA社の資金調達コストの加重平均(=WACC)となる、ということです。

いかがでしたか?

今回はファイナンスの基礎編として、ファイナンスの基礎となる知識を要点だけお伝えしました。

それではVi ses!

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