God dag!Lone Wolf会計士です。
前回まで、会計の必要性(一律のルールを作ることで過去比較・横比較を可能としていること)、および会計のすべての基礎となる基本概念をお伝えしました。
今回は会計の成果物である財務三表の話をしていきたいと思います。
それではいってみましょう。
このブログはこんなブログ
このブログは「グローバル×会計専門性」を目指す人を対象に、「米国公認会計士の魅力やキャリア情報、及び「グローバル×会計専門性」というキャリアを歩むうえで役に立つノウハウが得られる」というコンセプトで運営しています。
前提知識はゼロかつ初心者向けの記事のため、「グローバル×会計専門性」のキャリアを目指すつもりがない方でも、会計のエッセンスの理解に役立つ記事の執筆を心掛けています。
ご参考にして頂ければ幸いです。
会計の財務三表とは?
財務三表とは、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つのことを指します。
それぞれ独立しているように見えますが、密接に関わっていますので、その辺りを中心に解説していきたいと思います。
貸借対照表(バランスシート)とは?
まず最初に貸借対照表の話。英語ではBalance Sheet(バランスシート)と言います。
貸借対照表とは、ある会社のある一時点の財産の状況を表しています(「ストック情報」と呼んだりします)。
この「一時点」という概念が大事です。一瞬の話です。今日の貸借対照表と明日の貸借対照表は全くの別物です。
貸借対照表は、瞬間の出来事を写真に撮ったようなものなんだね
貸借対照表は上のような形式をしています。
注目する点は2つです。
- ①青色の線を境に、左側と右側に分かれており、左側と右側の合計の数値(380)が同じ
- ②貸借対照表の右側において、ピンク色の線を境に、上側と下側に分かれている。
①の右側と左側が同じ=バランスが取れているから、英語でバランスシートというんだね
わかりやすいように、それぞれの区分を色付けすると以下のような形になります。
まず左側(ピンク色部分)と右側(青色の部分+灰色の部分)の話から。
右側のうち、青色の部分は「負債」を、灰色の部分は「純資産」を表します。
「負債」は将来返済義務があるお金(他人のお金だから「他人資本」ともいう)。
「純資産」は将来返済義務がないお金。(自分のお金だから「自己資本」ともいう)
両方に共通するのは、「資金調達」です。貸借対照表の右側は「会社がどのように資金調達をしているか」を表していることになります。
そして、「調達してきたお金をどのように運用しているか」を表しているのが貸借対照表の左側の「資産」の部分です。
上の例でいうと、
- 2001年12月31日大晦日の夜の時点で、
- 返済義務がある他人のお金である負債280と、返済義務がない自分のお金である純資産100の合計380を調達しており、
- 調達してきたお金380は、現金100、売掛金50、有形固定資産200、無形固定資産30に使われている
貸借対照表はで抑えるべきポイントは、これだけです。
一点補足すると、貸借対照表はある一時点の情報を表しているので、決算ごとにゼロになるのではなく、内容が将来にわたって引き継がれていきます。
損益計算書とは?
損益計算書(英語ではIncome Statement)は「ある一定期間の損益の累積結果」を表したものです(「フロー」と呼んだりします)。
要するに、営んでいるビジネスは1年単位で儲かっているのか儲かっていないのかを表すものとなります。
また、段階損益にて各ステークホルダーの取り分を表示し、それぞれの段階の利益率が比較の際に有用です。この点は、後程説明します。
なお、前回会計の超基本前提のうちのひとつ、期間区分について説明しました。(お読みになっていない方のためにリンクを張っておきます)
簡単に言うと、会計の基本的な前提として、1年ごとに区切って毎年業績を報告する、というものがありました。
この1年間のビジネスの結果累積を表すものが損益計算書となります。
「ある一時点」を表す貸借対照表と違い、「1年間の累積」を表すものが損益計算書なんだね。
以下のような形式をしています。
2002年1月1日から2002年12月31日までの1年間の累積となっていることがわかりますね。
損益計算書において重要なポイントは、小計がたくさんある部分です。
上の例でいうと、売上総利益、営業利益、経常利益が小計、当期純利益がすべての合計となっています。
小計合計の使途としては、比率の計算と過去比較+他社比較で有用です。
具体的には以下のように売上高に対する比率を計算し、
- 利益率が競合他社と比べて良いのか?
- 自社の過去と比べて悪化していないか?
といった過去・横比較に有用、ということです。
なお、小計合計の解釈としては、「各ステークホルダーの取り分」です。
ずいぶん突飛なこというんだね…まずステークホルダーって何?
ステークホルダーとは、ご存知の方は多いとは思いますが、利害関係者のことです。
会社がビジネスを行う上では、たくさんの利害関係者がいます。
- ビジネスを行う上で必須である材料や商品・サービスの仕入先
- ビジネスに必要な資金を貸してくれる銀行
- ビジネスに貢献している従業員
- ビジネスの結果に基づいて、税金を徴収している国
- ビジネスに株式投資という形で応援してくれている株式投資家 等々
どの人たちも会社が健全に経営され、利益を出してくれないと困ってしまいます。立派な利害関係者ですね。
そして、これらの利害関係者は、以下のようなことを考えているはずです。
- 自分は会社にとってどんなステークホルダーなのか?
- 自分の取り分は売上高の何%ぐらいなのか?
- この会社はどのステークホルダーに一番還元しているのか?
例えば売上原価が大きい場合は、仕入先を大事にしている(もしくは仕入先のパワーが強い)のではないか?
例えば一般管理費が大きい場合は、従業員への給与としての還元率が大きいのではないか?
このような目線で損益計算書を眺めてみる方法もあるのではないかと思います。
特に一番下(英語でもボトムラインと言います)の当期純利益については、株主に回ってくるお金は最後の最後であることは重要なポイントです。
後程説明しますが、この金額が株主の持分となり、結果として貸借対照表の純資産(返済義務のないお金)が増えます。ここで損益計算書と貸借対照表の物語が交差します。
まとめです。
損益計算書は1年間のビジネスの結果の累積であり、段階損益にて各ステークホルダーの取り分を表示し、それぞれの段階の利益率が比較の際に有用、ということですね。
なお、一点補足すると、損益計算書は1年間の累積ですので、毎年の決算ごとにゼロとなり、会計年度が変わる毎に新しく作成されます(1年前の損益の累積は引き継がれません)。
キャッシュフロー計算書とは?
キャッシュフロー計算書は、その名前の通り、1年間の現金の流れを表しているものとなります。
これまで説明した通り、会計は発生主義に基づいていますので、現金主義とはかけ離れた存在です。
一方で、ビジネスでも一般の生活でも重要なのはキャッシュ!と思う人が大半だと思いますし、事実キャッシュが重要であることは議論の余地はないと思います。
キャッシュがないと、例えクレジットカードを使って買い物をしていても、いずれ引落しに耐えられなくなってしまいます。
これはビジネスでも同じです。
そんなニーズにお応えすべく、キャッシュフロー計算書は会計上の発生主義とキャッシュをつなぐ役割をしている、という理解をしていれば大体OKです。
「利益は意見、キャッシュは事実」的なことをいつかどこかで誰かが言っていたね。
ちなみに貸借対照表と損益計算書があれば、(大体ですが)キャッシュフロー計算書は作成できます。
よって財務三表の中でも、キャッシュフロー計算書はどちらかというと補足的な役割をしていることになります。
形式は簡略化すると以下のような形をしています。
キャッシュフロー計算書は、要は一年前の現金残高と、現在の現金残高の増減の内訳を表している、ということになります。
これだけです。ただの現金の増減の内訳です。簡単です。
増減の理由として、以下の3つに分類されています。
- 営業活動によるキャッシュフロー=本業から稼いだキャッシュを表す。
- 投資活動によるキャッシュフロー=将来の収入のため、どれだけ投資にキャッシュを使ったかを表す。例えば、工場を新設した、等。
- 財務活動によるキャッシュフロー=資金調達に関連するキャッシュを表す。例えば銀行から借金をし現金を調達した、等。
上の例では、1年間で現金が10増えていますが、内訳として、
- 本業からは30稼いだ
- 別途20他人から資金調達した
- 稼いだ30と、調達した20を使って将来のために40投資し、結果として10余った、
ということを表しています。
特に「投資活動」と「財務活動」のキャッシュフローに関する情報は、貸借対照表や損益計算書には出てきませんので、キャッシュフロー計算書を読むことが必要になります。
投資活動によるキャッシュフローは、将来のための投資に関する情報ですので、会社の将来性を評価する上ではかなり重要ですよね。
なお、この3つのキャッシュフローがそれぞれプラス、マイナスの組み合わせで、会社がどのような状況、成長段階にあるのか?なーんて分析方法もありますが、ここでは割愛します。
キャッシュフロー計算書のまとめです。
キャッシュフロー計算書は一年前の現金残高と、現在の現金残高の増減の内訳を3つのカテゴリーに分類して表している。
貸借対照表とキャッシュフロー計算書の関係は?
ここからは財務三表の関係性についてのお話。
貸借対照表とキャッシュフロー計算書の関係は、簡単です。以下の図をご覧ください。
これだけです。
上の例では、キャッシュフロー計算書は、1年前(ここでいう2001年12月31日時点)の現金残高100と、現在(ここでいう2002年12月31日時点)の現金残高110の差額である10の増減理由(内訳)を説明しているだけです。
よってキャッシュフロー計算書は、貸借対照表の一年前の現金残高と現在の現金残高を、その内訳を示すことでつないでいる役割を持っているということになります。
キャッシュフロー計算書と貸借対照表の物語は、このような形で交差します。
貸借対照表と損益計算書の関係は?
最後に貸借対照表と損益計算書の関係です。
一言でいうと、すべてのステークホルダーに支払った残りの利益は「自分のお金=自己資本」ですので、返済義務がない自分のお金である「純資産」が増えます。具体的には貸借対照表の「利益剰余金」が増加します。
上の例では1年前の利益剰余金60に、当期純利益である25が加算され、利益剰余金が85となりました。
利益剰余金は過去からの利益の累計を表します。ビジネス活動によって得られた利益はここに溜まっていくんですね。
利益剰余金がたくさんたまっている会社は、これまで儲かってきた実績がある優良会社の証明なんだね
なお、株主への配当の原資もこの利益剰余金なので、配当が実施されれば利益剰余金が減りますが、詳しいことは割愛します。
損益計算書で計算された当期純利益は、決算日に利益剰余金に形を変えて、終了です。
次の年度からは、また新しく一から損益計算書は作成されることになります。
損益計算書と貸借対照表の物語は、このような形で交差します。
最後に
いかがでしたでしょうか?
今回は会計の肝である財務三表について解説しました。
財務三表が何を表しているのか、3つにどのような関連性があるのか、大枠を理解するだけで十分です。
詳細は会計専門家に任せればよいのであって、何度も言うように大事なのは基本や考え方をわかっていて、専門家と大枠や向かうべき方向性についてディスカッションができるようになることです。
今回はこのあたりで。Vi ses!
コメント