God dag!Lone Wolf会計士です。
今回は企業価値評価の中で用いられることが多い、マーケットアプローチについて解説していきたいと思います。
それではいってみましょう!
※企業価値評価の全体像については、以下の記事を参考にしてください。
このブログはこんなブログ
このブログは「グローバル×会計専門性」を目指す人を対象に、「米国公認会計士の魅力やキャリア情報、及び「グローバル×会計専門性」というキャリアを歩むうえで役に立つノウハウが得られる」というコンセプトで運営しています。
前提知識はゼロかつ初心者向けの記事のため、「グローバル×会計専門性」のキャリアを目指すつもりがない方でも、会計のエッセンスの理解に役立つ記事の執筆を心掛けています。
ご参考にして頂ければ幸いです。
マーケットアプローチとは?
企業評価の中でマーケットアプローチとは、企業評価をしている対象企業自身の株価や対象企業と類似する上場会社やその事業、過去の取引等に基づいて比較評価をすることによって、対象企業の価値を評価する方法です。
株式市場で実際に発生し観測できる数値に基づいて評価をする、ということですね。
例えば、簡単な例でいうと、これから買収しようとしている企業と全く同一の企業が1年前に10億円で買収されていたとしたら、今回の買収においても10億円が参考となる価値となる、ということですね。
マーケットアプローチのメリット
マーケットアプローチのメリットを以下にまとめておくよ
- 実際に株式市場で発生している数値や実績に基づいているため、客観性が高い
- 株式市場に上場している企業であれば、その企業の株式が流通し日々値段がつけられているので、比較的容易に価値情報が入手可能である
マーケットアプローチのデメリット
マーケットアプローチのデメリットを以下にまとめておくよ
- 世界中の膨大な上場企業や過去の取引の中から、評価している企業と類似する企業を選定することに時間がかかり、また選定プロセスの中で主観性が入る余地がある
- 複雑かつグローバルな事業を営んでいる企業も多い中、正しい類似企業や類似取引を選定すること自体が困難な作業である
- 市場のデータについて、データ未整備等が理由で入手できる情報にも限界があることがある
- 評価している企業の事業内容によっては、そもそも類似する企業がない場合がある(例えば、新規ビジネス)。その場合、評価している企業のユニークさは価値に反映ができない
マーケットアプローチの手法
マーケットアプローチの手法として、代表的な3つの手法を紹介します。
①市場株価法
市場株価法はシンプルで、評価している企業自身が株式市場に上場している場合、日々取引されている株価情報が入手可能なので、その株価に基づいて価値評価をするという手法、になります。
買収に際して、そもそもその会社の株価があれば、企業価値評価も何もなくて、ただ単にその価格で取引が成立しそうだよね…
その通りで、株価は企業価値評価の上で非常に参考になる価格となりますが、株価は投機的な理由で乱高下していることや、経済的な影響により市場全体の株価が変動することもありますので、市場株価法のみを持って企業価値が決まる、ということは一概には言えないので注意が必要です。
②類似上場会社法
類似上場会社法は、評価している企業と事業や取扱い商品・サービス等が類似し、かつ株式市場に上場している企業の株価を参照に価値を評価していく手法、となります。
こちらは評価している企業が非上場企業である場合に多く用いられる手法です。
非上場企業のため評価している企業自体の株価は存在しないので、代わりとして、事業が類似している企業で株式市場に上場し株価情報が入手可能な場合その株価を参考にする、ということです。
ただし、株価自体は事業が類似している上場企業の時価総額しか表していません。
時価総額は貸借対照表の株主資本の時価評価額、でしかないので、どのように評価している企業と比較すればよいのでしょうか?
確かに、いくら事業は類似しているといっても、さすがに規模は違うよね
その通りで、規模の影響を除外するために、倍率(マルチプル)という概念を用いて比較することになります。
例えば、類似する上場企業の時価総額は当期純利益のxx倍なので、今回評価している対象企業の当期純利益にxx倍を乗ずることで、対象企業の時価総額を間接的に計算する、といった具合です。
参考とするメジャーな倍率指標は以下の通りです。
- PER(=当期純利益÷時価総額)
- PBR(=株主資本÷時価総額)
- EBIT倍率(=EBIT÷投下資本)
- EBITDA倍率(=EBITDA÷投下資本)
当期純利益や株主資本は、株主の取り分を表している(債権者の取り分は含んでいない)ため、「時価総額」が基準として倍率を計算しているに対し、
EBITやEBITDAは株主と債権者に配分可能な利益であるため、株主と債権者から資金調達し事業に使っている「投下資本」を基準に倍率を計算します。
具体的なマルチプルのイメージは以下の通りです。
このマルチプルを、評価している対象企業の数値に当てはめていくイメージです。
③類似取引法
類似取引法は、株式市場で過去に起こったM&Aによる取引価格を参考にして、実際の取引価格を評価している対象企業の財務数値に当てはめて企業評価を実施する手法、となります。
例えば、買収を検討している企業が、1年前に株式の20%を100億円で第三者に売却していたとしたら、今回取得を目論んでいる同社株式の50%は250億円(=100億円× (50%÷20%) )という買収価格がひとつの目安になりますよね。
例えば、買収を検討している企業と同じような企業が過去に10億円(当時の売上高は100億円)で買収されていたら、今回売上が1,000億円の企業を買収する際は、100億円(=10億円×(1,000億円÷100億円))が買収価格のひとつの目安になりますよね。
上の例では売上高を基準としましたが、何を基準とするかはケースバイケースとなります。
今回はこの辺りで。それではVi ses!
コメント